クマから身を守るために・・・
 
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はじめに
ツキノワグマは栃木県内の山岳地域を中心に、普通に生息する動物です。奥日光では人が入らない地域での目撃はもちろん、多くの人が行き来する戦場ヶ原の木道沿いでも数多く目撃されています。

ツキノワグマは普通、人間を避けて行動します。万一出会ってしまった場合も、刺激しない限り一方的に攻撃をしてくることはまずありません。不幸な出会いの多くは人間側の注意で回避できると考えられています。

奥日光を訪れる際は、ツキノワグマの生息域へ立ち入るという意識とツキノワグマに対する知識、そしてクマ避け鈴などのツキノワグマ対策が必要です。
 
 
まずはツキノワグマを知ろう
特徴
北海道に生息するヒグマと比べて小型で成獣で体長110〜130cm、体重40〜130kg程度。全身が黒い毛でおおわれ、胸に名前の由来となった白い三日月の模様があります。
運動能力
木登りが得意で、しばしば木の上で木の実を食べます。
山の中ではヒトよりも早く移動します。瞬発力も高いため、
ヒトが走って逃げることは得策ではありません。
写真
右上:ドングリを食べるために枝を折り集めたクマ棚と呼ばれる痕跡
右:ツキノワグマが木登りをしたときにできた爪あと

奥日光では各所でこうしたツキノワグマのフィールドサイン(生活した痕跡)を見つけることができます。
 
食性
ツキノワグマが獰猛な肉食動物であるというのは誤解です。シカなどの死体を食べることはありますが、積極的に動物を襲って食べることはありません。
実際には雑食で植物質から動物質まで様々なものを食べています。季節別にみると、春は木や草の新芽、夏は昆虫類、秋は木の実を多く食べます。

写真:ツキノワグマの糞、食べるものによって形や大きさは変わります。
 
行動
一頭あたりの行動圏は広く、オスで100平方km以上、メスでも50平方kmほどになります。個体ごとの年間の行動圏はほぼ一定ですが、なわばりのような排他的なものではなく、個体同士の行動圏には重なりが見られます。このため、餌の多い地域にはたくさんのクマが出現します。また、餌となる木の実が不作の年には、行動圏が広がることが知られています。
 
冬眠
12月から4月頃まで、樹洞や岩穴、木の根元の穴などで冬眠します。クマは冬眠する他の哺乳類に比べ、冬眠中の体温の下がり具合が少なく、外からの刺激で起き出すことがあります。また、メスは冬眠中に出産と授乳をしています。ツキノワグマは冬眠中は食物や水をとりませんし、排泄や排尿も一切しません。

   
ツキノワグマから身を守るには?
ツキノワグマから身を守るには?・・・出会わないのが一番!
ツキノワグマの生息域に立ち入ることは、遭遇したり被害を受けるといったリスクを生じます。このリスクを最小限に減らす工夫、すなわち「出会わないための工夫」が基本です。
 
・出没箇所を調べる
 目撃情報を収集し近日中に目撃されている場所では、行動を慎重に行ったり控えるようにしましょう。
                                →奥日光のクマ目撃情報はこちらから
 
・自分の存在を知らせる
 鈴やラジオなど大きな音を鳴らして人間の存在を知らせることで聴覚の発達したクマの方が先に気づいて避けてくれます。ただし、沢沿いでは水音にかき消されてしまう場合があるので注意が必要です。
クマ避け鈴
クマ避け鈴はアウトドアショップなどで販売されており、奥日光では日光自然博物館や赤沼自然情報センターなどでも入手できます。
ただし、奥日光を訪れる人の中には静けさを求める人もおり、クマ避け鈴の音がトラブルの元となってしまうこともありえます。人の多いところでは鈴をはずしたり綿を詰めて音を出さないなど他人に対する配慮も必要となります。
 
・夕方や早朝は出歩かない
夕方や早朝はツキノワグマの行動が最も活発になります。この時間帯に行動する場合は特に注意が必要です。
また、日中でも雨が降っている時やガスが出ている時などの薄暗い時についても同様です。
 
・単独行動はやめる
複数で行動することは、人間の存在をツキノワグマに知らせるうえでも、あるいはツキノワグマの存在に早めに気づくためにも有効です。
 
・危険なツキノワグマはつくらない
残飯やゴミを放置することは、ツキノワグマに人間の食物の味を覚えさせ、人に寄ってくる危険なツキノワグマをつくることにつながります。ゴミを捨てたり埋めたりすることは絶対にやめましょう。

 
・遠くにいるとき
まずは落ち着くことが大切です。ツキノワグマがまだこちらに気づいていない場合には走ったり大騒ぎしたりしないで静かにその場を立ち去りましょう。クマが近づいてくる場合には両手を大きく振りながら静かに声をかけ人がいることを知らせてやりましょう。
 
・近くで遭遇したとき
この場合も走ったりせずに相手の動きを見ながらゆっくり後退してください。走って逃げるとツキノワグマは反射的に追いかけてきて非常に危険です。
ツキノワグマがザックなどの荷物に手をつけていても取り返そうとするのは大変危険です。
子熊の近くには必ず母親熊がいます。子熊だからといって不用意に近づくのは自殺行為です。
 
・万が一襲われたとき
至近距離でツキノワグマに遭遇した時、急に立ち上がる、大声で叫ぶ、大きな音を出す、物を投げつけるといった行為はツキノワグマを刺激してかえって攻撃を誘発する可能性があり危険です。また、走って逃げても追いつかれる可能性が高いうえ、ツキノワグマを余計興奮させてしまいます。
それよりも地面に体を丸めて伏せ(窪地があれば窪地に伏せ)、両手を首の後ろに組んで攻撃から身を守ることを考えるべきでしょう。近くに大きな岩や倒木などがあればそれを利用して身を隠してクマが去るのを待ちましょう。
このほかの対処法として傘をツキノワグマの目の前で急に開いたり、ポンチョやレジャーシートを広げて助かった例もあるようですし、クマ撃退スプレーを使用して身を守ることも考えられます。
クマ撃退スプレー
ガス状になったトウガラシエキス(カプサイシン)を発射するスプレーで、クマの顔にかけることで強力な刺激と痛みで追い払うことができます。登山用品店などで1万円程度で入手できますが3年ごとに買い換える必要があります。
このスプレーは射程距離が4〜9m、噴射時間が約6秒程度といったものなので、落ち着いて使用しない限りは有効とはいえないかもしれません。これをもっているから大丈夫と過信はできません。

 
さいごに
ツキノワグマに遭遇した時の対処法については様々なことが言われていますが、遭遇時の状況・出会ったツキノワグマの個性によって対処法は変わりますし、こちら側もあせってしまい冷静にものを考えられない状態になってしまうでしょう。実際にツキノワグマに出会ってしまった、その時に、ベストな対処法を判断するのは非常に困難です。「出会ったらどうするか」ということよりも「出会わないための工夫」を第一に考えてください。
 
事故が起これば、そのクマは駆除されてしまいます。しかし、そのツキノワグマも奥日光の住人なのです。私たちの注意で不幸な出会い・事故は回避できます。人とツキノワグマとの共存のためにも自然の中へ入ってゆく一人一人の努力が求められているのです。